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GX移行債はどう使われているのか?令和6・7年度発行分が示す新たな方向性

エコトピック
脱炭素関連

GX移行債は、令和5年度(2023年度)には約1.6兆円、令和6年度(2024年度)には約1.4兆円がすでに発行されています。令和7年度(2025年度)入札予定総額は約1.2兆円程度になっています

前回の記事においては、令和5年度発行分のGX移行債の充当状況、および充当事業によるインパクト評価も紹介しました。詳細については、以下のリンクをご参照ください。

GX移行債はどう使われているのか?令和5年度発行分から見る資金の使い道とそのインパクト | 株式会社エコ・プラン

特に設備投資の分野では、弊社でも取り組んでいる補助事業の一例として、「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業」を取り上げました。本事業における16件の補助金支援実績をもとに、環境改善効果および経済効果が創出されていることを確認しています。

これらの事例から、GX移行債が多様なGX関連事業に充当されることで、脱炭素と経済成長の両立を支えていることが分かります。

それでは次に、令和6年度および令和7年度発行分がどのような事業に充当・充当予定であるのか、また前年度と比べてどのような変化があるのかを見ていきましょう。

令和6年度発行分GX移行債充当状況

令和6年度には、2024年5月から2025年1月にかけて複数回の入札が行われ、合計で1兆3,920億円が発行されました。資金は引き続きGX関連の予算に充当されていますが、その中身にはいくつかの変化が見られます。具体的には、以下の図の通りです。

参考資料:令和 6 年度発行分 資金充当レポート(令和8年1月 内閣官房 / 金融庁 / 財務省 / 経済産業省 / 環境省)

本図表は、2025年11月末時点における令和6年度発行分GX移行債の資金使途の状況を整理したものです。図表では、資金使途は三つのカテゴリーに分類されています。これから、カテゴリーごとに資金使途、とりわけ令和5年度発行分の使い道からの変化について紹介します。

(A)革新的技術の研究開発:

令和6年度発行分については、令和5年度発行分と同じく、高温ガス炉や高速炉、ポスト5G通信システムの研究開発事業への継続的な支援を通じて、低炭素・脱炭素エネルギーの拡大および利用効率の向上に引き続き貢献しています。

一方で、令和5年度発行分では、グリーンイノベーション基金事業において約7,564億円に達する大規模な投資が行われました。

これに対し、令和6年度発行分では同様の大規模投資は見られないものの、新たにディープテック・スタートアップ支援事業が開始されています。本事業は、創業前段階から事業拡大に至るまで、研究開発や設備投資を含む複数年度にわたる支援を予定しており、すべてのグリーンカテゴリーを対象としています。

これにより、排出削減に貢献し得る多様なグリーン分野のスタートアップの成長・発展を後押しすることが期待されています。

(B)成長と排出削減の両立に資する設備投資:

令和6年度における設備投資は、脱炭素社会の実現に向けた多層的な取組として位置付けられています。まず、既存産業においては、工場・事業所における省エネルギー性能の高い設備・機器の導入や、非化石エネルギーへの転換が継続的に推進されています。

さらに、鉄鋼や化学といった排出削減が困難な産業に対しては、エネルギー転換や生産プロセスの抜本的な変革を促すための設備投資支援が新たに講じられています

さらに、生産設備の脱炭素化にとどまらず、脱炭素に資する製品の製造サプライチェーンの強化にも重点が置かれています

具体的には、蓄電池や半導体といったエネルギー効率向上に寄与する重要物資への投資が拡大するとともに、水電解装置やペロブスカイト太陽電池などの再生可能エネルギー分野において独自技術を有する企業の育成を通じ、GXサプライチェーンの構築が進められています。

また、持続可能な航空燃料(SAF)やゼロエミッション船の製造・供給支援を通じて、航空・海運分野の脱炭素化も推進されています。

加えて、資源循環分野への投資も拡充されており、製品の長寿命化やリサイクルの促進が図られています。これらの取組により、生産性を維持・向上させつつ脱炭素化を実現するとともに、日本のサプライチェーンの強みを活かした競争力強化が図られています。さらに、投資対象は資源循環を含むバリューチェーン全体へと広がり、産業全体を通じた脱炭素化の推進が一層進展しています

(C)需要創出に向けた取組:

令和6年度においては、家庭部門および業務部門における省エネルギー投資が拡大するとともに、脱炭素製品については設備投資にとどまらず、実際の導入までを支援する取組が進められています

家庭部門では、断熱窓への改修促進などを通じた住宅の省エネルギー化・省CO2化を加速する事業が継続されています。さらに、新たに高効率給湯器の導入支援を通じた省エネルギー推進への投資も開始されています。

業務部門においては、商用車の電動化促進事業が引き続き支援されるとともに、業務用建築物の脱炭素改修(高効率空調機器の導入など)を加速するための新たな支援も開始されています。

また、蓄電池などの電力貯蔵システムについては、製造サプライチェーンの強化に加え、導入支援も進められています。さらに、「特定地域脱炭素移行加速交付金」を通じて、脱炭素製品・技術の導入などを推進することにより、地域全体の脱炭素化の推進も図られています。

(D)GX実現に向けた横串の取組

さらに、令和6年度には横断的な制度整備も進められています。具体的には、金融手法の導入により政策の市場化が促進されるとともに、GX推進機構が設立され、民間資金の供給を後押しする体制が構築されています。

令和7年度発行分充当予定事業

令和7年度のGX移行債が令和7年4月~令和8年3月発行され、今後の充当事業予定も公開されました。具体的には、以下の図の通りです。

参考資料:令和 7 年度充当予定事業(内閣官房 / 金融庁 / 財務省 / 経済産業省 / 環境省)

令和6年度と比べて令和7年度の特徴としては、全体として政策の方向性を維持しつつ、より一層の具体化・実装志向の強化が見られます。

(A)革新的技術の研究開発:

令和6年度に引き続き、高温ガス炉や高速炉、ポスト5G等の重点分野への支援が継続されていますが、令和7年度では「次世代革新炉」や「エッジAI半導体」など、より次世代技術に焦点を当てたテーマが強化されています

(B)成長と排出削減の両立に資する設備投資:

従来の蓄電池や半導体、GXサプライチェーンといった重点領域への投資に加え、令和7年度ではScope3排出量削減および企業間連携を重視した施策が新たに打ち出されています

これは、脱炭素経営の国際的潮流を背景に、大企業において自社のみならず取引先を含めたバリューチェーン全体での排出削減の重要性が高まっていることを踏まえたものです。

(C)需要創出に向けた取組:

令和6年度に大きく拡充された家庭、業務部門向け施策が、令和7年度でも継続・強化されています。断熱窓、高効率給湯器、クリーンエネルギー自動車、商用車電動化といった既存施策に加え、ペロブスカイト太陽電池など新技術の社会実装支援も新たに加わっています

これにより、需要側の裾野拡大と技術普及の加速が一段と進められています。

まとめ

全体として、令和6年度以降の取組は、研究開発から設備投資、さらに需要拡大に至るまで、一貫した流れとして整理することができます。

まず研究開発の面では、スタートアップ企業の活用や多様な研究基盤の強化を背景に、令和7年度以降は次世代技術の創出に重点が置かれています。

設備投資の面では、省エネルギー設備の導入にとどまらず、排出削減が困難な産業におけるエネルギー転換や生産プロセスの変革が進められており、あわせて日本の産業基盤の強みを活かしたGXサプライチェーンの構築が推進されています。これにより、脱炭素化と産業競争力の強化が一体的に図られています。

そして最も重要な点として、こうした研究開発や設備投資の成果である脱炭素製品・技術が、需要創出の段階へと展開され、実際の業務や生活の中で活用され始めている点が挙げられます。すなわち、技術開発から社会実装に至るまでの一連の循環が形成されつつあることが、本取組の大きな特徴といえます

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