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簡単に教えて!COP27の争点と合意内容

エコトピック
脱炭素関連
シャルム・エル・シェイク

エジプトのシャルム・エル・シェイクで11/6から11/20にかけてCOP27が開催されました。
COPとは「Conference of the Parties」の略称であり、1992年に採択された国連気候変動枠組み条約に基づき開かれる締約国会議を指しています。COPでは今まで、気候変動対策の国際的な枠組みが作られており、「京都議定書」や「パリ協定」もCOPで合意されたものです。

COPは、新型コロナウイルスの影響で開催が延期された2020年を除き、1995年から毎年開催されており、今年で27回目となります。

今回は、COP27の争点や合意内容についてご紹介いたします。

COP27の開催概要

国際会議

COP27はエジプトを議長国として、シャルム・エル・シェイクで開催されました。

COPは他の国際会議と同様に、議長国が中心となり、会議の開催、議題の決定、議論の主導、内容の取りまとめ、結果の発信をします。議長国は締約国が持ち回りで務め、会議の会場も基本的には議長国となります。(過去の開催状況はこちら)

また、COP27は11/18までの開催予定でしたが、ロス&ダメージに関する合意に到達できなかったこともあり、20日まで延長されました。

COP27の議論の争点

COP27では、長年にわたる議論や交渉から軸足を移し、実際に計画を実行に移すことが大きな目標として掲げられました。

主な争点として事前に公表されていたのは、以下の4つです。

  • 排出削減
  • 災害への対応
  • 先進国による被害に対する補償

排出削減

排出削減

1.5°C目標をより重要視することに合意したCOP26に対し、COP27では、目標達成に向けた具体的な取り組みの決定に向けた議論が行われると期待されていました。

10月26日に気候変動枠組条約の事務局が発表した報告書では、現在各国が掲げている温室効果ガスの削減目標が達成されたとしても、気温上昇を1.5°C以内に抑えることは困難であると示されました。

このような現状が続けば気候変動はさらに深刻になると考えられているため、COP27で各国の排出削減の取り組みの強化及び具体化が議論されると考えられていました。

災害への対応

災害

世界では、洪水、火災、豪雨などの大きな災害が気候変動の影響でより頻繁に起こるようになっています。

今年はパキスタンで例年の10倍以上もの降雨があり国土の3分の1が水没してしまった、と言う衝撃的なニュースもありました。

このような災害の影響を最も受けているような国や人々を守るために、災害への対応策についての検討が行われると期待されていました。

先進国による被害に対する補償

今回のCOPはアフリカでの開催だということもあり、発展途上国の主張が強調される議論となると考えられていました。

発展途上国は、二酸化炭素の排出量が先進国に比べてはるかに小さいにも関わらず、先述のパキスタンのように気候変動により大きな被害を受けています。

これに対して国際連合は、先進国が、途上国が負った気候変動に由来する被害に対する補償をするべきだ、と提言しています。

これまではデンマークだけが公式に補償を行うことに合意していますが、COP27で他国もこの補償を約束することが期待されていました。

一方で、先進国は新型コロナウイルスやウクライナ危機などの理由で財政的な余裕がないため、交渉は難航するとみられていました。

補償や資金援助といった形で、地球温暖化に伴う気候変動による「損失と被害(ロス&ダメージ)」への対応をCOPの正式議題とするのは、COP27が初めてでした

合意内容

今回のCOPの主な成果として、以下のものが挙げられます。

  • 気候変動対策の各分野における取り組み強化を表明したCOP27の全体決定である「シャルム・エル・シェイク実施計画」の合意
  • 2030年までの緩和の野心と実施を向上するための「緩和作業計画」の採択
  • ロス&ダメージ(気候変動の悪影響に伴う損失と損害)の支援のための措置を講じること及びその一環としてロス&ダメージ基金を設置することの決定

それぞれについて、簡単に説明いたします。

「シャルム・エル・シェイク実施計画」の合意

気候変動に関する16分野に関して、計62個の決定事項が示されました。

同決定書は、基本的には昨年のCOP26の全体決定である「グラスゴー気候合意」の内容を引き継いでおり、新規性には乏しいものとなっています。内容としては、緩和、適応、ロス&ダメージ、気候資金等の分野で、締約国の気候変動対策の強化を求めています。

その中で、グラスゴー気候合意にはなかった内容として、再生可能エネルギーへの言及があります。
温室効果ガス排出削減の方法としての再生可能エネルギーの導入の重要性が確認され、再生可能エネルギーへの公正な移行のためのサポートの必要性が強調されました。

さらに、2050年にネットゼロを実現するためには、2030年まで、毎年再生可能エネルギーに4兆米ドルの投資が必要であることも記載されました。

緩和の分野については、1.5°C目標の達成のためには2030年までに2019年比で43%の温室効果ガス排出削減が必要であることが認められました。

※「シャルム・エル・シェイク実施計画」の全文については、以下をご参照ください。
「シャルム・エル・シェイク実施計画」

「緩和作業計画」の採択

COP26のグラスゴー会議において立ち上げが合意されていた、2030年までの緩和の野心と実施を緊急に高めるための「緩和作業計画」が策定されました。
同計画の主な内容は、以下の通りです。

  • 1.5°目標達成の重要性について
  • 計画期間を2026年までとして毎年議題として取り上げて進捗を確認すること
  • 全てのセクターや分野横断的事項等について対象とすること
  • 最低年2回のワークショップの開催と報告という一連のサイクルを確立すること
  • 緩和作業計画の成果を閣僚級ラウンドテーブルで毎年議論すること

この計画には、(排出削減に関して)新たな削減目標を押し付けるものではない、と言う文言が意図的に入れられており、逃げ道が残る表現となっていることが残念なポイントです。

また、2030年目標の見直しや強化を促す内容になることが期待されましたが、そのような内容は含まれませんでした。

ロス&ダメージ基金の設置

ロス&ダメージ基金

今回のCOPでは、開催国及び途上国側の強い要求もあり、新たな議題としてロス&ダメージの資金面での支援が取り上げられ、結果としてロス&ダメージのための新基金の設立が決定されました

基金の設立にあたって、問題となったのが資金を拠出するドナー、また資金の受け手を具体的にどのように設定するか、と言うことでした。

先進国側は、ドナーとして中国などの新興国を含めること、また受け手は後発開発途上国に限定することなどを提案しましたが、これに対して新興国やその他の途上国が強く反発しました。

結果的には、ドナーは先進国を含め、既存の資金メカニズムやNGO、民間など幅広く設定され、資金の受け手は「途上国の中でも特に脆弱な国々」であると決められました

今後の流れとしては、移行委員会を立ち上げ、更にはCOP28での提言が予定されています。

最後に

COP27でロス&ダメージが初めて議題として取り上げられ、最終的には基金の設立に合意されたことは気候変動の国際交渉上では大きな転換点となりそうです。
合意に至るために先進国が妥協をしたことにより、今後は発展途上国側も国際交渉においてより協力的な姿勢になることが期待されます

その一方で、排出削減の面では期待されていた進展はなく、多くの課題が残る結果となりました
フランスのエネルギー改革大臣であるアニエス・パニエ=リュナシェ氏は、「COP27の合意はフランス及び欧州(EU)が望んだ野心的なものではなかった。特に温室効果ガス排出量削減への一層の努力の必要性および化石燃料からの脱却について進展がみられなかった」と失望の意を表明しました。

一進一退である気候変動の国際交渉ですが、2050年は刻々と迫っており、残された時間は多くはありません。ロス&ダメージ基金の設立を転機に、各国がより足並みを揃えて環境問題に取り組んでいくことを期待したいです。

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