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【紫外線の殺菌効果解説シリーズ(3)「紫外線の人体への影響は?」】

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紫外線とその殺菌効果についてやさしく解説する【紫外線の殺菌効果解説シリーズ】の第三弾となる
(3)「紫外線の人体への影響は?」です!さっそく始めましょう。

細胞の中のDNAや、その他の細胞内の物質を壊してしまう紫外線は、人間の体にも悪影響を与えるのでは?と考えた方もいるかもしれません。その通り、紫外線は人体へもダメージを与えます。今回は人体への影響について解説します!

紫外線の影響を受ける体の部位は二か所!?

紫外線の影響を直接受ける体の部位は、二か所しかありません。皮膚と目です。それぞれについて説明していきます。

皮膚への影響

まず皮膚の構造を見てみましょう。

皮膚の組織図

外側から順に、表皮、真皮、皮下組織というものになります。そして、表皮はさらに角質層、顆粒層、有棘層、基底層の四つに分かれます。

紫外線によるダメージは大きく分けて、日焼けと皮膚がんの二つになります。

日焼け

皮膚にやってきた紫外線は、基底層に存在する物質に吸収されてエネルギーを与えます。それが血管の膨張につながって皮膚の色が赤くなります。

受け取ったエネルギーは他にも、肌の色の元となっている物質(メラニン色素)を大量に生成し、肌が黒くなります。(赤くなることをサンバーン、黒くなることをサンタンと呼びます。)

UV-AとUV-Bは皮膚の基底層まで入ることができるので、日焼けを起こしますが、UV-Cは表面の角質層でほとんど吸収されるため、日焼けを起こすことはありません。

紫外線と皮膚の組織

(1)「そもそも紫外線ってなんだっけ?」の最後で、太陽光からやってくる紫外線はUV-AとUV-Bです、と説明しました。太陽に当たって日焼けする、というのはUV-AとUV-Bのしわざなのですね。

皮膚がんの可能性

前回の(2)「紫外線の性質は?その殺菌効果について」にて、波長が260 nmくらいのUV-CがDNAに吸収される、という話をしました。人間が持つDNAも例外ではありません。

DNAは波長が280~315 nmのUV-Bも少し吸収します。UV-CやUV-Bを吸収してDNAが壊されると、細胞死が起こります。細胞死自体は実は人間にとって大きな問題ではないのですが、死までは至らない瀕死の状態でDNAが細胞を作ろうと頑張ってしまうと、がん細胞となってしまうことがあります。

皮膚がんにも種類がありますが、危険なものだとがん細胞が血液に乗って体の他の部分に転移してしまうことがありえます。もしかすると命を落とすようなこともありうるのです。

がん細胞ができることは稀なのですが、やはり何度も何度も紫外線を浴びたりしていると、がん細胞ができる確率はあがっていってしまいます。

[注意]日焼けをしなかったら皮膚がんにならない、というわけではない。

日焼けと皮膚がんは別物です。UV-Cを浴びることでは日焼けはしませんが、将来皮膚がんになる可能性はあるのです。

逆に、日焼けをしていれば皮膚がんになる可能性は増えます。UV-Bによる日焼けを起こせば、それと同時にUV-BによるDNAの破壊も起こるからです。

少しややこしいので注意が必要です。

目への影響

眼の構造

光が入ってくる順に、角膜、水晶体、硝子体、そして眼の内部の壁を覆っている網膜というものがあります。網膜に可視光線が吸収されることで私たち人間は世界を見ることができています。

網膜は光に敏感な性質を持っており、角膜や水晶体は過剰な光を吸収して網膜を傷つけないようにする働きをしています。その分、角膜や水晶体へのダメージが、眼のけが・病気となることがあります。

角膜が傷つくことによる「角膜炎」

角膜へのダメージが最も大きい、つまり角膜が最もよく吸収する紫外線は、波長が260~290 nmのUV-Cです。太陽光に含まれませんので、人工的なUV-Cに注意する必要があります。

また、太陽光に含まれるUV-Bも角膜にダメージを与えます。UV-Bによる角膜炎はスキー場でよく起こります。雪が太陽光に含まれるUV-Bをよく反射するので、太陽を直接見なくても、雪からのUV-Bの反射で角膜はダメージを受けます。

角膜へのUV-BとUV-C

角膜を構成する物質が紫外線を吸収してエネルギーを受け取ると、組織が破壊されます。組織の破壊や、それを治そうと体が反応することで、目の痛みや充血、涙が出るなどの症状が現れます。

通常は1週間程度あれば治るようです。が、重症化すると視力低下やひどいときには失明してしまうこともあるようなので、目に違和感があればすぐに眼科に行ったほうが良いですね。

水晶体が傷つくことによる「白内障」

UV-Cは角膜がほとんど吸収してしまうので、水晶体へはUV-AとUV-Bがダメージを与えることになります。

水晶体がUV-AやUV-Bを吸収してエネルギーを受け取ると、そのエネルギーを使って水晶体内部で化学反応が起こります。その反応の生成物が溜まっていくのが白内障という病気です。

水晶体は、外から入ってきた光を屈折させて網膜に像を写す、カメラのレンズのような役割で、物を見るために非常に重要な組織です。

水晶体が生成物で満たされるようになると、目が見えなくなってしまいます。また、こうした生成物は歳とともに溜まっていくので、高齢になればなるほど症状が顕著になっていきます。

人体への影響まとめ

以上、人体への影響を説明してきましたが、ちょっと複雑になってしまいました。表にしてまとめます。

影響を受ける部位は皮膚と目の二つ、そして波長によって影響力は異なるという点をよく理解しておいてください。

紫外線の安全基準値とは?

人体への影響を理解できたと思います。紫外線は太陽に含まれていますし、UV-Cなどは工業的に利用されています。紫外線からの影響を全くのゼロにすることは不可能です。

そのため、ゼロにはできなくても、紫外線を浴びるとしてもここまでにするように、という安全基準値が考えられています。東日本大震災で放射性物質に汚染されたお米に、安全基準値が設けられたことと同じです。

次回は、その安全基準値について説明していきます!
【紫外線の殺菌効果解説シリーズ(3)「紫外線の人体への影響は?」】(終)

シリーズ案内

(1)「そもそも紫外線ってなんだっけ?」
 https://www.ecology-plan.co.jp/information/13696/

(2)「紫外線の性質は?その殺菌効果について」
 https://www.ecology-plan.co.jp/information/13920/

(3)「紫外線の人体への影響は?」
 https://www.ecology-plan.co.jp/information/14468/

(4)「紫外線の安全基準値について考えてみよう」
近日公開予定。

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