エコトピック

2021.03.23

3つのフットプリントとバーチャルウォーター!遠い国の災害が他人ごとではない理由

フットプリント イメージ画像

◆参照
※トウモロコシ1㎏に必要な灌漑用水 環境省 よくわかるバーチャルウォーター
※牛乳のウォーターフットプリント 「アニマルライツセンター」
※牛乳(生乳)のカーボンフットプリント 「IDEA」
※トウモロコシのみを乳牛に与えた場合の必要量 「よつ葉」
※乳牛の1日に飲む水の量、糞の量 「酪農PLUS」 
※牛のゲップの量 「北大R&BP」


 
1. カーボンフットプリントってなに? 

カーボンフットプリントとは、商品やサービスを作る際の、原材料の調達から、製品の製造や流通の過程、さらには廃棄まで全工程で排出された二酸化炭素(温室効果ガス)の全体量を指します。

※これに似た意味を持つ用語として、LCA(Life Cycle Assessment)があります。
LCAは温室効果ガスだけでなく、水や土壌などに対する負荷も含んでいます。
LCAは、カーボンフットプリントを算出する際に用いる手法です。

LCAについて詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
LCAって何?2050年脱炭素目標に欠かせないキーワード!

参照:カーボンフットプリント制度の在り方



商品やサービスのCO2の排出量が、カーボンフットプリントの算出によって表示(見える化)されることにより、消費者が商品の環境負荷について知ることができ、購入する際の判断材料になります。

カーボンプライシング どっちを買う?

※図はイメージです。数字の根拠はありません。

カーボンプライシングで環境負荷が見える化されることで、事業者は、製造のどの段階で環境負荷が高いかを割り出すことができ、効率的に環境負荷を下げることが可能になります。

 
2. ウォーターフットプリントってなに? 

カーボンフットプリントが【温室効果ガスの足跡】であるのに対して、ウォーターフットプリントは、【水の足跡】です。

水利用に関する潜在的な環境影響を、原材料の栽培・生産、製造・加工、輸送・流通、消費、廃棄・リサイクルまでのライフサイクル全体で定量的に評価する手法です。どこの水を使っているものか、についても反映されています。

2014年に、「ウォーターフットプリント(WFP)」の概念が、国際規格のISO 14046として定められました。

背景にあるのは、【水リスク】です。世界的に起こる大規模な干ばつや洪水、水不足や水質汚染を受け、各国で規制や対応が迫られる中、企業も経営上のリスクとして認識するようになったことが挙げられます。

気候危機が深刻になるにつれ、水リスクに対する対応の重要性も高まると予測されています。

参照:環境省 ウォーターフットプリント算出事例集

ウォーターフットプリント 琵琶湖13個分

※参照:牛肉1㎏のバーチャルウォーター
※琵琶湖の水量:国土交通省
※アメリカ牛肉輸入量:NHKニュース参照(URLリンクはありません)

 
3. バーチャルウォーターってなに? 

バーチャルウォーターは、食料の輸入国が、仮に自国でその食料を生産した場合、どれくらいの量の水が必要かを推定したものです。ウォーターフットプリントと違う点は、その水がどこから来ているのか、については、バーチャルウォーターでは着目されていません。

例えば、1kgのトウモロコシを生産するには、1800リットルの水が必要です。
また、牛はトウモロコシを始めとする穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kgを生産するには、その約20,000倍の水が必要になります。

バーチャルウォーターの場合、どこで生産された飼料を食べたか、や、どこから輸送されてきたか、といった要素は含まれていません。

参照:環境省 virtual water

 
4. エコロジカル・フットプリントってなに? 

エコロジカル・フットプリントは、あらゆる食材や商品を利用した際、それらを生産したり、廃棄したりするための土地の大きさを見える化したものです。

人間活動により消費される資源量を分析・評価する手法のひとつで、人間1人が持続可能な生活を送るのに必要な生産可能な土地面積(水産資源の利用を含めて計算する場合は陸水面積となる)として表わされる。

例えば、あるエコロジカル・フットプリントでは、1)化石燃料の消費によって排出される二酸化炭素を吸収するために必要な森林面積、2)道路、建築物等に使われる土地面積、3)食糧の生産に必要な土地面積、4)紙、木材等の生産に必要な土地面積、を合計した値として計算される。

この場合、アメリカで人間1人が必要とする生産可能な土地面積は5.1ha、カナダでは4.3ha、日本2.3ha、インド0.4ha、世界平均1.8haとなり、先進国の資源の過剰消費の実態を示すものである。

これは人間が地球環境に及ぼす影響の大きさとみることもできることから、エコロジカル・フットプリントつまり「地球の自然生態系を踏みつけた足跡(または、その大きさ)」と呼んでいる。

引用:EICネット

エコロジカルフットプリント 日本23個分

※日本人口:総務省
※日本国土:外務省

 
5. どんな食材が多いの?

カーボンフットプリント、ウォーターフットプリント、バーチャルウォーター、エコロジカルフットプリントの中で、データが揃えやすかったカーボンフットプリント、バーチャルウォーターについて、多い食品品目を一覧にしました。

カーボンフットプリントの大きい食材 カーボンフットプリント(t-CO₂/t) バーチャルウォーターの多い食材 バーチャルウォーター量(m³/t)
コーヒー 1.19~10.41 オリーブオイル 21,106
2.35~7.29 コーヒー 21,000
きのこ類 0.18~5.42 牛肉 20,600
ハム類、ソーセージ類、ベーコン類 2.30~4.25 バター 13,200
牛肉 0.93~4.01 くり 7,145
チョコレート 3.49 6,400
くり、くるみ 2.22~3.26 豚肉 5,900
チーズ 2.94 紅茶 4,940
かまぼこ・ちくわなどのねり製品 1.44~2.89 こしょう 4,921
バター 2.84 そば 4,600
イチゴ 1.47~2.63 カレールー 4,561
ごま油 2.01 鶏肉 4,500
魚類 1.926 3,700
アイスクリーム 1.78 生クリーム 3,554
アスパラガス 1.77 チーズ 3,200
納豆 1.71 鶏卵 3,200
マーガリン 1.11~1.61 しいたけ 3,125
ケチャップ 1.50 麦茶 2,800
温室メロン 0.62~1.44 大豆 2,500
はちみつ 1.31 にんにく 2,317

この表から、コーヒー、麦茶や紅茶などのお茶、きのこ類、肉類はカーボンフットプリントもバーチャルウォーター量も大きい食材であり、その生産の際には多くのCO2が排出されているとともに、多量の水を要することがわかります。

カーボンフットプリントもバーチャルウォーター量も、食材の重さを基準としているため、コーヒーやお茶、きのこ類などの一度に多くは食べないものはそれほど大きな問題ではないと考えられます。逆に、肉類は頻繁に食べ、一度に食べる量も多い食材です。

こうした環境への影響の面から、肉類を食べない人や、食べる量を減らす人が世界中で増えています。また、植物を原料として肉に味や触感を近づけた培養肉の市場も急拡大しています。

参照:環境省 バーチャルウォーター量 一覧表
参照:味の素グループ版 CO₂排出係数データベース

 
7. 輸入先の気候変動

カーボンフットプリント、ウォーターフットプリント、バーチャルウォーター、エコロジカル・フットプリントは、食材だけの指標ではありません。ただ、食糧自給率がカロリーベースで30%の日本にとって、食材を通して世界に与える環境負荷を見ていくことは、日本のリスク管理にも直結します。

日本への品目別仮想投入水量

出典:東京大学生産技術研究所 世界の水危機、日本の水問題

日本のバーチャルウォーターを見ると、アメリカとオーストラリアの水資源を間接的に多く輸入、消費していることがわかります。これらの国々の農業事情は持続可能と言えるのでしょうか。

アメリカの地下水枯渇
灌漑用水 イメージ

日本の食材輸入国第一位は、アメリカです。アメリカから輸入している食材は下記の通りです。

アメリカ 輸入品目

出典:農林水産省

米以外の主要な食材をアメリカに依存していることがわかります。そんなアメリカでは地下水の枯渇が深刻な問題となっています。

アメリカの中西部の乾燥地帯では、かつては広大な土地に大型の灌漑施設を用いて農業を行っていました。毎分1万リットルという大量の地下水を汲み上げ、回転しながら水をまく、という手法が用いられていました。

しかし、各地で地下水が大量に吸い上げられてしまったため、地下水の量は急激に減少し、作物の収穫量が落ち込んでいきました

この地域は乾燥地帯であるため、雨が降ることはほとんどなく、なくなってしまった地下水が新たに貯まることはないため、土地を見捨ててしまう農家の人も出始めました。

参照:アメリカでの地下水の枯渇 NHK for School

オーストラリアの乾燥化
干ばつ イメージ

オーストラリアも、アメリカ同様、日本の牛肉の輸入先の1つです。オーストラリアでは乾燥化が進んでおり、これが農業に大きな影響を及ぼしています。

オーストラリアは元々地理的に乾燥している地域で、降水量が少ないですが、地球温暖化による気温上昇により水分の蒸発量が大きくなり、乾燥化が進んでいます。

乾燥化が進むことによって森林火災が起き、草木が焼き払われさらに乾燥化が進行する、という悪循環が引き起こされます。

そして、乾燥化によって干ばつが引き起こされます。干ばつは、雨が少ないことによって起こる土地が水分不足となる状態ですが、これは農業に大きな影響を及ぼします。

オーストラリアは放牧が盛んですが、干ばつが起こると牛や羊の餌となる牧草が育たず、飼料の確保が困難になります。そのため、酪農品や農作物の生産量が減少してしまいます。

参照:乾燥大陸・オーストラリアを取り巻く状況について

日本は食料自給率が低く、海外からの食料の輸入、すなわち水の輸入に頼っているため、このような海外の水不足問題は他人事ではありません。

 
8. 一番の改善策は近くで栽培された食材を選ぶこと!
地産野菜 イメージ

気候危機や水問題につながっている食品ですが、これらの問題を改善するために大事なのが、国内で栽培された食品を選ぶことです。

外国産の替わりに国内産の食品を消費することで、外国産の食品を日本に輸送する際の二酸化炭素の排出が削減でき、カーボンフットプリントやウォーターフットプリント、バーチャルウォーターを小さくできます。

さらに、日本の風景や農地の保全、土地の荒廃防止、子供への食育、地方創生にもつながる可能性を秘めています。

参照:バーチャルウォーターから分かる水問題とは?

 
10. 最後に

今回、カーボンフットプリントとウォーターフットプリント、バーチャルウォーターとエコロジカルフットプリントをご紹介しました。
日々選ぶ食材が、世界の気候危機や水問題の原因となっていることがわかり、どこでどのように栽培された食材なのかを確認することの重要性を考えさせられます。

これらの指標は、まだ普及していませんが、世界的にも日本でも議論が進むカーボンプライシングに、密接に関わってくる部分です。

概要を理解したうえで、気候危機への取り組みが表面だけの対策にならないためにも、実施した取り組みを消費者の購買選択に反映させるためにも、おさえておきたいキーワードではないでしょうか。



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