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テナント企業の再エネ化を応援!「リーディングテナント行動方針」とは?

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環境省は2021年9月に、2050年カーボンニュートラル実現に向けた新たな施策として、「リーディングテナント行動指針」を策定しました。

今回は、この指針の内容と賛同方法について、説明いたします。

「リーディングテナント行動方針」策定の背景

日本政府は2050年カーボンニュートラル実現のため、2030年までに2013年比で46%のCO2削減を目標として掲げています。そのためには業務部門のエネルギー起源のCO2排出削減が51%必要だとされています。

※部門には【エネルギー転換部門】、【産業部門】、【民生(家庭)部門】、【民生(業務)部門】、【運輸部門】があります。

【民生(業務)部門】は、事業所内で消費したエネルギーに伴うCO₂排出です。

業務部門のCO2排出削減の方法としては、「省エネ」と「再エネ利用」があります。ただ、これまでは、オフィスビルに入居するテナント企業が、省エネや再エネを利用したいと思っても、個別契約ではないため、できませんでした。

そこで誕生したのが、リーディングテナント行動方針です。

リーディングテナント行動方針は、テナント企業のこうした要望をまとめて開示することで、オフィスビルを所有する側への働きかけを強化し、業務部門のCO₂排出削減につなげようとするものです。

リーディングテナント行動方針を理解し、賛同することで、テナント企業が入居先を選ぶ際の方針を示すことになります。

どのような内容なの?

行動方針の概要

行動方針は、【省エネ】、【再生可能エネルギーの活用】、【安全性・健康・快適性】の3つの行動理念によって構成されており、それぞれについて「入居先選定時の行動方針」と「入居後の行動方針」が設定されています。

賛同した企業は3つの行動理念に従うことになります。この3つの行動理念について、詳しく説明いたします。

エネルギー性能の向上/エネルギー消費量の削減

入居先選定時:
省エネルギーに配慮されており、他の建物と比較可能な情報が公開されていること
(特にエネルギー性能が優れたビル(ZEBなど)については、より優先的に入居先の検討対象とする)

エネルギー性能を比較する情報としては、以下の評価制度があげられます。

BELS、CASBEE、LEED、DBJ Green Building認証、東京都カーボンレポート、東京都トップレベル事業所認定制度、東京都建築物環境計画書制度、BOMA360、GRESB

詳しくは、以下をご参照ください。

また、優先的に入居先の検討対象とするZEBには、下記が全て含まれます。

  • ZEB(省エネ+創エネで0%以下まで削減)
  • Nearly ZEB(省エネ+創エネで25%以下まで削減)
  • ZEB Ready(省エネで50%以下まで削減)
  • ZEB Oriented(省エネで用途毎に既定する削減量を達成+未評価技術の導入による更なる省エネ)

入居後:
グリーンリースやエコチューニング等の活用を通じて、オーナー等と協力してエネルギー消費量の削減に努める

・グリーンリース
オーナーとテナントが、環境負荷の低減などについて契約等を取り決め実践すること。
オーナーが光熱費削減のために投資をし、テナントが光熱費削減分の一部をオーナーに還元することによりWin-Winに。

・エコチューニング
建築物の快適性や生産性を保ちつつ、設備機器やシステムの適切な運用改善を行うこと。
運用改善にテナントが協力することでより効果的な削減が可能になる。

協力する相手は、オーナー(建物所有者)に加え、ディベロッパーやAM(アセットマネジメント会社)事業者、PM(プロパティマネジメント会社)事業者、BM(ビルマネジメント会社)事業者などが考えられます。

再生可能エネルギーの活用

入居先選定時:
敷地内に限らず敷地外も含め、再生可能エネルギーを活用した電力や熱が供給され、テナントとして利用できること

ZEBの定義においては、敷地内に設置されている再生可能エネルギー源のみを評価しますが、この行動方針では、敷地外から調達される再エネも対象になっています

再生可能エネルギー調達方法

具体的な調達方法は上図の3つです。

これらはRE100にも認められていて、このような方法で再生可能エネルギーの供給を受けられるテナントビルに入居することで準拠可能になります。

入居後:
再生可能エネルギーの活用ニーズをオーナーに伝え、その調達を促し、必要に応じて調達方法や費用についてオーナーと協議する

大手のディベロッパーなどのオーナーが再エネを調達し、テナントに供給する事例もあります。

安全性、健康・快適性、知的生産性の確保

入居先選定時:
建物における健康、快適性、知的生産性などの向上に対する配慮に加え、非常時のエネルギー供給などによるBCP強化、感染症対策など安心・安全に対する配慮がなされていること
(特に認証の所得等により、性能が担保されたビルについては、より優先的に入居先の検討対象とする)

建物の健康・快適性、知的生産性等を評価・認証する指標として、CASBEEウェルネスオフィス評価認証、WELL認証などがあります。

入居後:
エネルギー消費量の削減と併せ、非常時のBCP強化、感染症対策などの取り組みや健康・快適性、知的生産性向上に関する取り組みを行う

この方針に基づいた行動としては、例えば、日本サステナブル建築協会が公開している「中小ビルの改修ハンドブック」の自己評価のためのチェックリストを元に、改善すべき点及び改善のための取り組みを行うことなどが考えられます。

行動方針に従うと、どのようなメリットがあるの?

◆ZEBへの積極的な入居により社会的評価が向上し、ESG投資の促進材料になる。

投資家や評価機関が参照するCDPへの回答書やSBT・PRIの報告書に記載することで、CDP等における評価向上やESG投資の呼び込みにつながる

◆快適性が確保されていることにより、従業員の生産性や満足度の向上・人材確保が予想される。

◆ニーズにあったZEBや、再エネを活用可能なビルの供給が増え、入居しやすくなる。

◆環境省が、賛同者を対象に活動を支援するインセンティブを実施する予定。

今年度は、基礎的な情報提供を行うセミナー・勉強会や、CDP、機関投資家等との意見交換会の開催が予定されています。また、次年度以降は、目標の設定や達成に必要な取り組みに対する個別コンサル支援や、各種補助事業の活用の推進が検討されています。

どうやって賛同するの?

この取り組みへの参加を表明するためには、環境省 ZEB PORTALから、登録フォームにアクセスする必要があります。

ZEB PORTALのサイトの「賛同登録フォームはこちら」と書いてあるタブをクリックします。

参加登録フォーム

登録フォームは、4つの項目で構成されています。

まず、1.賛同者の属性 では、連絡先等の基本情報を入力します。

次に、2.賛同の種類について では、2種類ある賛同方法のどちらかを選択します。
賛同の種類は、
① 行動方針の理念に賛同する
② 上記に加え、独自に目標を設定してその実現に取り組む

というもので、②が歓迎されています。また、企業独自の目標の有無により、インセンティブを分けることも検討されています。

②を選択した場合、「入居先選定時の目標」と「入居後の目標」のいずれか、または両方について、「目標とする時期」、「目標の対象とする事業所」、「具体的な行動方針」を定める必要があります。

また、3.賛同の公表方法について では賛同した事実をどこで発表するか、またCDPへの回答書やSBT、PRIの報告書に記載する予定があるか等を選択します。

4.目標について は、②に賛同する場合、記入例を元に、設定する目標を入力します。

最後に

これまで企業が拠点拡大や移転の入居先を決める際、場所や価格や快適性などを判断材料にしていました。しかしこれからはそれだけでなく、企業の脱炭素化が評価される流れにおいて、入居するビルの省エネ性能や再エネ活用が可能か、といった持続可能な観点がより重要視されていくと予想されます。

リーディングテナント行動方針に賛同することで、ビルオーナー側との交渉に臨みやすくなり、ビルオーナー側の脱炭素への取り組みのきっかけにつながることが期待されます。

テナント企業側もビルオーナー側も、長期的視点でどのようなオフィスビルにしていくか、検討していくよい機会になるのではないでしょうか。

環境省 – リーディングテナント行動方針に関する説明会資料

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