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【教えて!】冬に使うことが多いお湯、CO₂排出量は水の何倍?

エコトピック
脱炭素関連
水とお湯のCO₂排出量 41.6倍

冬、寒くなると、手洗いや洗顔や歯磨き、食器洗いなどで、お湯を使う方も多いのではないでしょうか。
蛇口をひねればお湯が出ることが、当たり前になってきていますが、そのお湯を作るために、どれだけのエネルギーが使われているか、考えたことはありますか?

今回は、水とお湯で、どれくらい温室効果ガスの排出量に差があるのか、ご紹介します。

お湯を10秒だすと水を1.7ℓ使い、CO₂を16.9~52.1g排出している!

私たちは日常生活で頻繁に水道を使いますが、それに伴い水資源を利用し、二酸化炭素を排出しています。

一回一回ではその影響が小さいですが、それが積み重なると、かなり大きな影響になります。

水やお湯を使うことにより消費する水の量と、排出する二酸化炭素の量について、説明いたします。

消費する水の量

蛇口から1分間に出る水の量は、少しひねると6ℓ、全開にすると20ℓにもなると言われています。

参照:知多市 水道の上手な使い方

このことから、普通に水道をひねった場合、1分間に出る水の量を10ℓだと仮定すると、10秒間、普通に水を出した場合は、およそ2ℓの水を使っていることになります

二酸化炭素の排出源

水道の利用に伴う二酸化炭素の排出には、どのようなものがあるでしょうか。

一番イメージしやすいのは、水を温めるためのガスや電気の使用に伴う二酸化炭素の排出だと思います。

しかし、実は、水道自体を利用するのにも二酸化炭素が排出されています

なぜなら、水道水の浄水や供給にエネルギーが必要であり、エネルギーを作るときにCO₂の排出が伴うからです。

地域により差はありますが、東京都水道局の2020年度の実績値では、水1㎥あたり245gのCO₂が排出されています

参照:東京都水道局 くらしと水道

この排出量は、水の供給に伴うCO₂排出の40~130倍ほどもあります(ガスを使うか電気を使うかによって異なります)。

排出される二酸化炭素の量を計算してみよう!

10秒間お湯を使用した場合の二酸化炭素排出量を、水の供給による排出と水を温める際の排出に分けて計算してみます。

水の供給に伴うCO₂排出量は0.41g!

水の供給に伴うCO₂排出量は、

水道使用時間(分)×水道1分の使用で流れる水の量(ℓ/分)×水道水の1ℓの使用に伴うCO₂排出量(g-CO₂/ℓ)

と表されます。 この式を利用すると、10秒間お湯を使用した場合の水道水の供給に伴うCO₂排出量は、

10/60(分)×10(ℓ/分)×0.245(g-CO₂/ℓ)=0.41 g-CO₂

と計算できます。

水を温める際のCO₂排出量は16.66g!(都市ガスの場合)

水を温める際のCO₂排出量は、

水道使用時間(分)×水道1分の使用で流れる水の量(ℓ/分)×上昇した温度(℃)×1ℓの水の温度を1℃上げるのに必要な熱量(J/ℓ・℃)×都市ガスにより1Jの熱量を発生させたときの二酸化炭素排出量(g-CO₂/J)÷熱効率

と表されます。
この式を利用すると、10秒間水道を使用した場合の水を温める際のCO₂排出量は、

10/60(分)×10(ℓ/分)×30(℃)×4200(J/ℓ・℃)×0.0000714(g-CO₂/J)÷0.9=16.66 g-CO₂と計算できます。


この排出量が、お湯を10秒使用したときと、水を10秒使用したときのCO₂排出量の差になります。

お湯を10秒使うと、17.07gのCO₂排出を伴う!

お湯の使用に伴うCO₂排出量は、水の供給による排出と水を温める際の排出の合計なので、
0.41g-CO₂+16.66g-CO₂=17.07g-CO₂
と計算できます。

また、お湯を作る際に都市ガスではなくLPガス(プロパンガス)や電気を使う場合もありますが、その場合のCO2排出量は以下のようになります。

都市ガス:17.07g-CO₂
LPガス:16.87g-CO₂
電気:52.11g-CO₂

洗顔 歯磨き 食器洗いでこれだけの差

食器洗い

お湯を10秒使うと、水を使った場合よりもCO₂を16.7g多く排出することが分かりました。

では、日常生活で水を使えるのにも関わらずお湯を使ってしまう場面で、どのくらいの差が生まれるのでしょうか。

私たちが生活においてお湯をよく使う場面である手洗い、洗顔、歯磨き、食器洗いについて考えてみましょう。

※お風呂などでもお湯を使いますが、お風呂のお湯を水で代替するのは現実的ではないため、除外して考えます。
また、食器洗いではお湯を使う方が汚れが落ちやすいため、水の使用量を減らすという点ではお湯を使う方が環境に良いとも考えられますが、今回はCO₂排出量にのみ着目します。

1日にお湯を使う時間はおよそ20分もある!

手洗い、洗顔、歯磨き、食器洗いの4つの場面において、毎日何回するか、また一回あたりどのくらいの時間使うかを考えてみましょう。

場面回数時間合計時間
手洗い5回30秒2分30秒
洗顔1回30秒30秒
歯磨き3回30秒1分30秒
食器洗い1回15分15分

個人差はあると思いますが、私たちは普段の生活で1日に20分も水、もしくはお湯を使っています

お湯の代わりに水を使うと、CO₂の排出を1日あたり2kgも減らせる!

水 or お湯 CO₂1日2㎏の差

お湯を10秒使うと、水を使った場合よりもCO₂を16.7g多く排出します。

このことから、お湯を1200秒(20分)使った時、水を使った場合と比較してCO₂を16.7g×1200秒/10秒=2004gも多く排出していることが分かります。

普段お湯を使っている場面で水を使うようにするだけで、1日に2kgもCO₂排出量を減らすことができます。

また、お湯を使いたい冬の時期が1年で100日ほどあると考えると、この期間でずっと水を使い続けた場合、1年で200kg分もCO₂の排出量を減らすことができることになります

日本全体にしたらこれだけ減らせる!

冬場にお湯の代わりに水を使い続ければ200kg分のCO₂排出を削減できることが分かりました。

では、これを日本全体で行った場合、どのくらいのCO₂が削減できるのでしょうか。

日本の人口のおよそ1億2000万人全員がお湯の代わりに水を使った場合、なんと1年で2400万tものCO₂が削減できます!

これは、日本のCO₂排出量全体の2.3%です

最後に

水道

水道から10秒、水を出すときのCO₂排出量は、0.41g-CO₂であるのに対し、お湯を10秒出した場合は、17.1g-CO₂という数値を出しました。

お湯を使うと、水と比べ、約41.6倍の温室効果ガスを排出することになります。

食器洗いや手洗いなど、私たちが普段の生活で、お湯ではなく水を使うようにするだけで、日本のCO₂排出量の2.3%が削減できることが分かりました。

まさに、「塵も積もれば山となる」です。

お湯で顔や手を洗うと、乾燥しがちな冬の肌の必要な油分まで洗い流してしまい、カサカサになりやすいです。

ガス代や電気代が高くなっているので、節約にもなります。

寒い冬、朝の洗顔や、手洗いうがい時、ついお湯を使いたくなりますが、お湯を使う機会を減らすことが、地球環境にも、お肌にも、お財布にも優しくできそうです。

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