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【COP28】に向けて、気候変動イニシアティブ提言に賛同しました。

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気候変動イニシアティブ提言イメージ

エコ・プランは、【気候変動イニシアティブ】の「2030年 GHG排出削減目標と 国際競争力強化の 同時達成に向けた提言」に賛同しました。

この提言は、2023年5月に日本で行われたG7サミットの際、303団体の賛同のもとで提言した「再生可能エネルギーとカーボンプライシングで二つの危機を打開する」を受け、政府より実効性のあるカーボンプライシングの具体的な提案を求められたことに対しての回答と、COP28への機運を高めるための提言です。(2023年12月5日に公表)

気候変動イニシアティブでは、カーボンプライシング制度の提言作成を目的に、同メッセージの賛同企業を対象にカーボンプライシングに関する関心・課題を伺うアンケートを実施し、その後、有志企業で検討会を立ち上げ、下記の提言をまとめました。

◆提言全文

気候変動イニシアティブ(JCI)メンバーによるカーボンプライシング提言
2030年GHG排出削減目標と国際競争力強化の同時達成に向けて

政府は、2050年・2030年の温室効果ガス排出量削減目標と、安価かつ安定したエネルギー供給、経済成長の同時達成を目指して、グリーン・トランスフォーメーション(GX)の実現を目指している。

その一環として、GX経済移行債による投資支援や化石燃料賦課金、GX-ETSから成る「成長志向型カーボンプライシング構想」が打ち出された。長年議論されてきたカーボンプライシングの導入に道筋がつけられたことは、大きな前進として歓迎できる。

その上で更なる改善を施すことによって、国際的に求められている規模での排出削減に向けて、強力な推進力とすることが期待される。政府は現在、制度の具体化を進めているが、私たちは、特に以下の3つの観点に留意することが必要と考える。

国の温室効果ガス排出量削減目標、とりわけ2030年目標の確実な達成

現在示されている自主的な制度では排出削減効果が限定的になり、また導入も遅いため2030年削減目標が未達に終わる懸念がある。日本が世界に公約した目標が確実に達成でき、更に野心的な排出削減を求める国際的潮流に合致するような制度が必要である。

排出削減に取り組む企業に不利益のない公平な制度

自主的な制度参加では、コストを負担して排出削減に取り組む企業が、参加しない企業に競争上劣後し、不利益をこうむる可能性がある。一定の要件に合致する全ての企業が必ず参加する公平な制度が求められる。

排出削減に取り組む企業に不利益のない公平な制度

自主的な制度参加では、コストを負担して排出削減に取り組む企業が、参加しない企業に競争上劣後し、不利益をこうむる可能性がある。一定の要件に合致する全ての企業が必ず参加する公平な制度が求められる。

日本経済の競争力の強化に貢献する制度

不十分な炭素価格では、日本の企業が炭素国境調整措置(CBAM)の対象となることや、国際的なサプライチェーン・投資先から除外されるおそれがある。国際水準での排出削減と再生可能エネルギーの導入が進み、ビジネスの場としての日本の魅力を向上させる制度が必要である。

2030年までの残り時間は少ない。その中で実効性の高いカーボンプライシングを実現していくためには、既に世界で広く導入されている炭素税と排出量取引制度の経験を十分に活かし、化石燃料賦課金、GX-ETSをより良いものとすべきである。

具体的には、今後の制度設計を適切に方向づけるために、私たちは、次の6つの原則が満たされることを強く求める。

(1) 2030年削減目標達成に向けて2025年を目処として実効性の高いカーボンプライシング制度を導入するべき

パリ協定の掲げる1.5度目標の達成のため、IPCCは世界全体で2035年までのGHG60%削減(2019年比)が必要であることを示した。

こうした知見を踏まえ、日本の2030年削減目標を必ず達成するために、現在のスケジュールを前倒しし、2025年を目処に実効性の高いカーボンプライシング制度を導入するべきである。

また、排出削減の実効性を高めるため、世界で先行する排出量取引制度と同様に、GX-ETSには対象部門からの総排出量の上限(キャップ)を設定し、1.5度目標の実現にむけたタイムラインに沿って次第に強化されていく制度とすべきである。

(2) 一定の要件を満たす企業を一律に制度の対象として公平性を担保するべき

排出量取引制度では、公平性を期すために、排出量やエネルギー使用量など、一定の要件を満たす企業全てを一律に制度の対象とするべきである。また、化石燃料賦課金とともに、社名公表をはじめとした履行確保の措置を導入するべきである。

両制度の導入にあたっては、二重負担を回避し、事務負担が抑制されるような制度設計が求められる。それぞれのメリット・デメリットが相互に補完され、幅広い企業が削減に取り組む、より公平かつ効果的な制度設計としていく。

(3) 世界に比肩する水準で将来の炭素価格を明示するべき

企業の投資判断に役立つ形で、IEAが示す2030年130ドル/t-CO2など、国際的な水準に比肩する炭素価格を目指すことを導入時に明示するべきである。導入後には、今後の科学的知見の充実や国際議論に沿った適時の見直しが必要となる。

また、先進国である日本は、更に野心的な炭素価格を目指すことも望ましい。他方、GX推進法では化石燃料賦課金の賦課金単価に上限を設けている。

エネルギーに係る負担が過度にならないような配慮は必要であるが、炭素価格を国際的な水準に適合させる上で支障になるのであれば、当該上限は撤廃されるべきである。

(4) 国際的なルールに適合した制度とするべき

国内外でのルールの違いにより、企業に二重の事務負担や競争上の不利益が生じないよう、化石燃料賦課金と排出量取引制度は、国際的なルールに適合した制度とするべきである。

また、EUの炭素国境調整措置(CBAM)の対象にならないためには、他国・地域と同水準かつ同質の炭素価格を目指して、制度対象の一律性と広さ、履行確保措置、炭素価格の引き上げペースなど基本的な制度設計を行う必要がある。

制度設計においては、他国・地域で得られた教訓を十分に踏まえるべきである。特にクレジットの使用のあり方は、国際的な動向を受けて慎重に検討するべきである。

(5) 公正な評価のもと排出削減が困難な企業の削減を政府収入により支援するべき

既存技術では排出削減が困難な業種での新技術の開発・普及や、エネルギー転換に伴う中小企業等の負担への対応、再エネ・省エネの導入拡大に向けた取組みの加速を、カーボンプライシング制度の収入で支援するべきである。

その際には、1.5度目標に不整合な技術(石炭火力発電でのアンモニア混焼など)を支援しない等、一定の条件で絞り込む必要がある。また、各支援で見込まれる排出削減の量や時点を明確にした、メリハリの利いた分配が必要である。

更に、当該支援は制度設計全体を歪めないようにしなければならず、過渡的なものとすべきである。

(6) カーボンプライシングの立案・評価・更新では透明性を確保するべき

カーボンプライシングに利害関係を有する社会の広範なアクターが、専門的知見や国内外の動向、危機意識、生物多様性や資源循環などの他領域との関係性を共有・議論する場を定期的に設けるべきである。

その構成は、特定の業種の企業に偏ることなく、幅広い非国家アクターの参加が求められる。なお、2030年までの残り時間が少ないことに鑑みて、導入に向けた議論は迅速かつ効率的なものにしなければならない。

※出典:気候変動イニシアティブ ウェブサイト

気候変動イニシアティブは、企業:603( うち金融・投資機関:58 )、 自治体:39 、 その他:152 ( うち大学・研究機関:10 、 事業者団体:3 、 消費者団体:13 、 文化施設・宗教団体:4 、 NPO/NGO等:122 )の794団体(2023年11月13日時点)が参加する、日本で最大規模のイニシアティブです。

これからも、脱炭素社会に向け、業界や組織を超えた取り組みに参加、協力していきます。

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