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【2050年HFCs(代替フロン類)排出量0目標】日本と世界の動き!

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脱炭素関連
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脱炭素の流れが加速する中、2050年に排出量を0にする必要があるのは、二酸化炭素だけではありません。最近注目されてきたメタンもそうですが、今回は排出量が増加の一途をたどる、代替フロン類(HFCs)の削減について、簡単にご紹介します。

日本の代替フロン類削減目標

日本は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言していますが、ここでいうカーボンニュートラルには代替フロン類も含まれています。

日本の代替フロン類の削減目標は、2030年までに2013年度比で32%減(21.6百万トン)、2050年には0にするというものです。

2030フロン削減目標グラフ

近年、代替フロン類以外の温室効果ガス排出量は減少していますが、代替フロン類は年々増加しています。

日本政府はフロン類排出削減に向け、下記の方針を打ち出しました。(抜粋)

◆ガス・製品製造分野におけるノンフロン・低GWP化の推進
• 指定製品制度の導入
• 省エネ型自然冷媒機器の導入支援

◆業務用冷凍空調機器の使用時におけるフロン類の漏えい防止
• フロン類算定漏えい量報告・公表制度の効果的な運用
• フロン排出抑制法の適切な実施・運用(機器の管理者による点検の実施)

◆業務用冷凍空調機器からの廃棄時等のフロン類の回収の促進
• フロン排出抑制法の適切な実施・運用(機器の廃棄時の確実な回収依頼、充填回収業者による確実な回収の実施)

◆産業界の自主的な取組の推進
• 産業界によるHFCs等の排出抑制に係る自主行動計画に基づく取組の促進

上流部分での対策が効果的として、早期にノンフロン機器の主流化を目指しています。そして2050年には代替フロン類の排出0を目指しています。

CO₂冷媒 フロン削減計画グラフイラスト

※キガリ改正:
オゾン層を破壊するフロンを廃絶するための「モントリオール議定書」の枠組みの中で、2016年に、代替フロンを新たに議定書の規制対象とする改正提案が採択され、2019年に発行されました。これをキガリ改正といいます。これにより、代替フロン類も世界的に削減する取り決めとなりました。

キガリ改正により、先進国は2036年までに85%削減することになりました。

キガリ改正 各国削減目標

日本政府の検討委員の意見(抜粋)

2021年4月9日、代替フロン類の削減に向けて、何が必要か、議論が行われました。

下記は「4月9日に開催された「中央環境審議会地球環境部会中長期の気候変動対策検討小委員会・産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会地球温暖化対策検討WG合同会合」における委員」の主な意見です。(一部抜粋)

【全般的なご意見】
HFCsの排出量増加が、エネルギー起源CO2の削減効果を相殺してしまっている現状。
• 今後世界における冷凍冷蔵・空調需要は急増が予想されている。日本の技術や日本企業が活躍・貢献できる余地がある分野であり戦略や積極的な後押しが必要ではないか。

【蛇口・上流関連】
• 2050に向けた自然冷媒への移行を描くロードマップや推進施策が必要</spamn。企業としてもロードマップを元に投資を検討する。 • 既存機器への対策も重要だが、上流対策の強化が最も効果的
 対策の強化が自然冷媒等の分野において日本企業の優位に繋がるのではないか。
 新規機器に対するグリーン冷媒開発やトップランナー制度の運用をしっかりとするべき。
• 既存機器使用者に対して新規製品のメリットを伝えるなど周知徹底が必要。
• 高GWPから中低GWP冷媒への移行を進めるようなレトロフィットを推進する政策も必要ではないか。
• 新型コロナウイルス感染症によるライフスタイルの変化により、冷凍冷蔵倉庫の需要は一定又は増加が予想され、今後、老朽化する冷凍冷蔵倉庫のリプレースに係る方針についてロードマップが必要ではないか。
・Climate transitionの一環として、リプレースをsustainable financeの対象とするなどインセンティブを明確に位置づけるべきではないか。

【中・下流関連】
• 温対計画FUにおいて使用時漏えい防止に関するデータが得られていないのは問題であり、早急に解決すべき。
既存機器に対して、IoT等を活用したフロン漏えい防止対策や回収技術のイノベーションが必要
• HFCsの回収・破壊を促進するため、インセンティブの検討も重要。自動車リサイクル法のような仕組みを参考に検討すべきでは
ないか。
・HFCsの使用に当たって、トレーサビリティが重要。

※トレーサビリティ:
 「その製品がいつ、どこで、だれによって作られたのか」を明らかにするために、原材料の調達、生産、消費または廃棄まで追跡可能な状態にすること

※出典:環境省 経産省 代替フロンに関する状況と現行の取組について

EUの規制・CO₂冷媒導入例

海外でも、各国が様々な代替フロン規制を行なっています。

EUでは、2015年より新しい代替フロンガス規制(Regulation(EU) No 517/2014)が制定されました。この規制は2006年に定められた規制をより厳格化したものとなっていて、Fガス(HFC,PFC等フッ素を含む温室効果ガス)の排出量を2030年までに3分の2に削減することを目的としています

その内容は、

・GWP(地球温暖化係数)の高いFガスをしようしている製品・機器の市場販売禁止
・2020年以降、既存冷却装置のサービス・メンテナンスにおける高GWPガス(2500以上)の使用禁止
・HFCの総量規制と段階的削減
・Fガスの回収、報告義務、研修等

カーエアコン

さらに、EUでは、カーエアコンに用いられる冷媒に対する規制も設けています。

EUでは、2017年より、欧州で上市される全ての新車において、GWP値が150を超える冷媒の使用が禁止されています。
これにより、従来カーエアコンに使用されていた冷媒であるR134a(GWP:1300)の使用を禁止しました。

この規制に対し、メルセデス・ベンツは、新たにCO₂冷媒を用いたカーエアコンを開発しました。

CO₂冷媒は高い圧力が必要となるため、R134aを用いた場合と比べ10倍ほどの圧力が必要で、そのためコンプレッサーやホースなど、車の設計を完全に見直す必要がありました。

これには高い費用がかかるため、より安価にCO₂冷媒を用いられる技術を開発することが課題であると言えます。

参照:
欧米のフロン規制
諸外国におけるフロン類の排出抑制施策
Mercedes to Debut Air Conditioning with CO₂ Refrigerant
CO₂冷媒 世界のフロン削減目標イラスト

※出典:環境省 経産省 代替フロンに関する状況と現行の取組について

最後に

世界では、代替フロン類の排出が今後倍増すると予測されています。その温室効果は二酸化炭素と比べものにならないくらい高いです。

CO₂冷媒 世界のフロン使用量増大予測イラスト

※出典:環境省 経産省 代替フロンに関する状況と現行の取組について

海外においては、より温暖化係数の低い代替フロンを、既存の業務用空調機に充填して使用する事例もあるようです。

ただ日本では、メーカー指定の冷媒以外を充填することは、メーカー補償がない限り、故障や事故につながるリスクがあるため、対応できていません。

日本において、業務用空調機へのCO₂冷媒をはじめとした自然冷媒の活用は、まだ先になりそうですが、今後も業務用エアコンを取り扱う事業者として、代替フロン類や冷媒についての動向に注力してまいります。

この記事で出てきた環境用語をサクッと復習!

フロン従来、エアコンや冷蔵庫の冷媒として用いられてきた物質。環境負荷が大きいことから、使用の廃止が進んでいる。
特定フロンフロンの中でも、CFCとHCFCのことをいう。オゾン層破壊を起こす。
代替フロンフロンの中で、HFCのことをいう。オゾン層は破壊しないが、温室効果が大きい。
自然冷媒ノンフロンの中でも、自然界の中に元々存在する物質のこと。代表的なものに、二酸化炭素、水、アンモニアなどがある。
地球温暖化係数二酸化炭素の温室効果を1としたときの、各物質の温室効果の程度を数値にしたもの。

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