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そんな動きも?【COP26】の押さえたいポイント!

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イギリスのグラスゴーで26回目となるCOPが10月31日から11月13日の14日間開催されました。
COPとはConference of the Parties”の略称であり、1992年に採択された国連気候変動枠組み条約に基づき開かれる締約国会議を指しています。

1995年から毎年開催されていましたが、昨年開催予定であったCOP26は新型コロナウイルスの影響で初めて延期となりました。

今回は、2年ぶりの開催となったCOP26について、ポイントをご紹介いたします。

◆COPが開催されるようになった背景は【なるほど!脱炭素の歴史がキーワードと年表でよくわかる!】をご覧ください。

COP26の概要

COPは他の国際会議と同様に、議長国が中心となり、会議の開催、議題の決定、議論の主導、内容の取りまとめ、結果の発信をします。議長国は締約国が持ち回りで務め、会議の会場も基本的には議長国となります。(過去の開催状況はこちら)

COP26はイギリスを議長国として、グラスゴーで開催されました。

10月31日に、閉幕したローマでのG20サミットを引き継ぐ形で開幕し、予定より1日延長され11月13日に閉幕しました。最終日に議論がまとまらず(各国が良くも悪くも最後まで妥協しないため)会期を延長するという構図は毎回見られ、今回もある意味予想通りの状況となりました。

COPでは、開会の儀式(議長の選出、議題承認、次回の日程と開催地の決定など)を一通り行った後、様々な議題が日ごとに話し合われます。

今回議題となったのは、ファイナンス(長期の気候ファイナンス※資金調達、運用)、技術開発・移転、キャパシティビルディング(能力の構築、向上)、発展途上国、ジェンダーと気候変動、ワルシャワ国際メカニズム(2013年のCOP19で設立することが合意された巨大台風など,気候変動の悪影響による損失と被害に対処する国際組織。)などのテーマです。

今回の議論の焦点

COP26で達成すべき事項として事前に公表されていたのは、以下の4つです。

(COP26公式サイト COP26 GOALS より作成)

①2050年までに世界の排出量をネットゼロ、気温上昇を1.5度以内に安定させる

①に対しては、以下のような具体策が挙げられています。

  • 石炭のフェーズアウトを加速
  • 森林破壊の抑制
  • 電気自動車への転換を加速
  • 再生可能エネルギーへの投資促進

②地域と野生生物を保護する

②は、既に現れている気候変動の影響を受けている地域が、生態系の保護や維持、インフラ等のレジリエンス強化を行えるように、協働する必要があるという「適応策」の視点に立った言及です。

適応策」とは、変化した気候に順応するための対策で、気候変動による影響は既に各地で見られ、排出削減を続けても少なからず生じると予測されることから「緩和策」とともに重要だとされています。

緩和策気候変動による影響を抑えるための対策。温室効果ガス排出量削減のための、省エネや再エネ導入などの取組は緩和策にあたります。

③十分なファイナンスを動かす

③は、①②の実現のため、先進国は2020年までに少なくとも年間1,000億ドルの気候関連ファイナンスを動員しなければならないというものです。

これは、2009年のCOP15の成果物である「コペンハーゲン合意」に関連するもので、その項目8の中には以下のような記述があります。

2020年までに、先進国は合同で年間1,000億ドルを目指して、途上国の気候変動対策需要に応えるための資金を動員する

しかし、2019年の動員額は796億ドル(OECD)と足下で未達成の状況です。

世界の温室効果ガス排出量のうち、第1位の中国は2019年排出量で27%に達し、OECD合計を初めて上回ったと報告されています。排出量第3位のインドと合わせて3割超を占めるため、未だ途上国に分類される両国を含めた国々へ、適切な資金動員を行うことは非常に重要で不可欠です。

④目標実現のためともに行動する

④は、協働によってのみ、気候危機という困難に打ち勝つことができうるとして、以下のような行動が求められています。

  • パリ協定のルールブック詳細を確定させる
  • 政府・産業界・市民社会の協働により、気候危機に立ち向かう行動を推進する

では、COP26を経てこれらの論点はどのような見解で合意されたのでしょうか。
加盟国全体での合意文書と、今回多用された有志連合による合意に分けてご紹介いたします。

結果① 全体で合意されたこと

COP26全体を通しての最終成果は、Glasgow Climate Pactにまとめられています。
以下の8つのテーマにわたり、計71項目について記載されました。

  1. 科学と緊急性
  2. 適応
  3. 適応ファイナンス
  4. 緩和
  5. 緩和と適応のためのファイナンス・技術・移転・キャパシティビルディング
  6. 損失・損害
  7. 実行
  8. 協働

この中で従来から変化した点が見られた「4、緩和」について3点見ていきます。

2℃目標の不十分さと1.5℃目標の追求を明示

2℃上昇に比べ1.5℃上昇に抑えることで気候変動リスクが大幅に低下することを認識し、1.5℃上昇に抑える努力を追及する

1つ目は、2℃目標の不十分さと1.5℃目標の追求を明示した点です。

従来は「産業革命以降の気温上昇を2℃、可能な限り1.5℃に抑える」といった表現がなされており、直前に実施されたG20ローマサミットでも「パリ協定に基づく各国の削減目標(NDC : Nationally Determined Contributions)の引き上げ更新にコミットする」等、従来の方針の記載にとどまっていました。

しかし、COP26の議論を終えた合意文書では、従来の2℃目標、1.5℃目標の記載だけでなく上記の内容も加えられました。

気温上昇2℃と1.5℃のリスクの差異を明示し、1.5℃上昇に抑える重要性を示したことは今後の方針に大きな示唆を与えると考えられます。

メタンなどCO₂以外の削減に言及

2030年までに、メタンなど二酸化炭素以外の温室効果ガス排出を削減するための更なる行動を考慮する

2つ目は、メタンなど二酸化炭素以外の温室効果ガス排出の削減に言及した点です。
特に、二酸化炭素の25倍もの温室効果をもつメタンを明記したことで、具体策を生み出しやすい環境が整備されたといえます。実際、COP26期間中にもメタン削減に向けた有志連合が発足(詳しくは次節)しました。

石炭火力発電の削減を明記

対策措置のない石炭火力発電の削減(フェーズダウン)、非効率な化石燃料への補助金撤廃(フェーズアウト)に向けた努力を加速する

3つ目は、石炭火力を明記した点です。石炭火力の「撤廃(フェーズアウト)」というドラフトの記述から「削減(フェーズダウン)」に変えられたことばかり盛んに報道されましたが、そもそも国連の合意文書で”石炭“という個別のエネルギー源を名指しすること自体が極めて異例であり、一定の評価に値すると考えることができます。

また、直前に行われたG20の合意文書においても、対策措置のない海外石炭火力発電所への新規の公的支援を、2021年末までに終了させるという約束が記載されました。
こちらも「今年度末」というスピード感で決定がなされたのは、非常に前向きな進展といえます。

ただし、当然ながら様々な懸念点もあります。G20合意であれば、国内の新規投資や民間ファイナンスについては触れていない点が抜け穴となっており、中国などは今後も国内で高排出の発電所を新規建設していくことが見込まれます。

COP26の合意は具体的なものではないため、削減に向けた時間軸が各国で大きく異なり、そのスピード感はバラついた状態が続くことが予測されます。

結果② 有志連合による合意

今回のCOPでは、具体的なテーマについて有志連合による合意という手法が多用されました。

加盟国の全会一致を導けなかった議長国英国の手腕が問われる一方で、200を超える加盟国の全会一致が難しい中で「有志国だけでも合意を取り付け前に進める」という英国の意向が伺え、一定の成果を生み出しました。

石炭火力発電廃止 46か国・地域署名

例えば、主要国は2030年代、他は2040年代に排出削減対策をしていない石炭火力発電を廃止することを盛り込んだ声明は、英独仏やEUなど46カ国・地域が署名しました。

日本や世界の二大排出国中国・アメリカは不参加であり、実効性は不透明といえます。一方で、韓国、インドネシアなどの23ヵ国は初めて廃止を表明しており、功績も伺えます。

※COP26 公式サイトグローバル石炭からクリーン電力への移行声明 

脱石油・ガス枠組み発足 世界10の国と地域

石炭だけでなく、石油が天然ガスの生産についても、段階的な廃止に向けた国際的枠組みが発足しました。

日本やアメリカ、中国や産油国の多くは参加していませんが、脱炭素を実現するためには必要な動きと言えます。

※COP26 公式サイト クリーンエネルギー移行のための国際的な公的支援に関する声明

車を全てゼロエミッション 28か国と自動車メーカー11社参加

同様に、ガソリン車の新車販売を主要市場で2035年、世界で2040年までに終えるとの宣言は、欧州と南米が中心の28カ国と、自動車メーカー11社による参加となりました。日本、米国、中国、ドイツは参加していません。

※COP26 公式サイト100%ゼロエミッション車とバンへの移行を加速することに関するCOP26宣言:2022年の行動計画

メタン30%削減 100か国賛同

また、先程触れたメタンについては、2030年までに2020年比で30%削減することを目標としたグローバル・メタン・プレッジが発表され、日本を含めた100ヵ国以上が賛同しました。

これはアメリカのバイデン大統領とEUのフォンデアライエン委員長が9月に提案していたもので、COP26会期中の11/2に発足となりました。

2030年までに森林破壊を止め回復を宣言 141か国署名

世界の森林面積は1990-2020年の30年間で1億7800万ha(日本の国土面積の約5倍)が減少しています。

※林野庁 世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要

人為的な減少を食い止めるため、2030年までに森林破壊を止め回復する宣言に141か国が署名しました。

署名国の保有する森林は世界の森林の85%に広がり、署名国には、アマゾン川流域の大規模な森林伐採を進めるブラジルも含まれています。

世界最大のパーム油輸出国のインドネシアも署名の意向を示しています。

世界の大企業30社以上も、森林破壊に関連する活動への投資停止を約束する見通しです。

※COP26 公式サイト

・世界の森林財政の誓約
・森林と土地利用に関するグラスゴー指導者の宣言
森林減少国、増加国

※林野庁 世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要

加盟国の全会一致により足並みをそろえることが最善ですが、COPのように大規模な枠組みとなれば各国の利害調整は非常に難しく、妥協的な合意に落ち着く場合が殆どです。

そのことを踏まえると、具体的な合意に賛同する有志連合から対策を進め、その輪を拡大していくほうが得策といえるかもしれません。

その他の分野の動き(航空、農業、教育、・・・)

上記以外にも、様々な分野での議論が行われ、枠組みができました。

一例:

まとめ

今回は2年ぶりの開催となったCOPでの合意について見ていきました。

石炭火力について(特に「廃止」から「削減」に成り下がったというような内容)ばかりが報道されているように見受けられるニュースもありますが、急激な転換を合意することだけが正義ではありません。

そもそも合意したからといって、実現できるとは限りませんし、欧州の天然ガス価格高騰や世界的な原油価格高騰はエネルギー転換の副作用でもあります。

「廃止」に合意しないから駄目、と言いつつ、原油価格高騰を嘆くのは矛盾します。

対策が急務であるということは周知の事実ですが、誰が・どの程度・何のリスクを負うのかといったバランスを考慮していくことが求められています。

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