エコトピック

2021.02.02

シンプルなアイデアで世界を変えた、CDPとは?

環境とアイデア


今回は、大統領でも、大企業のCEOでも大金持ちの資産家でもない人の、1つのシンプルなアイデアで世界の流れを変えた組織、【CDP】について解説いたします。


CDPってなに?

CDPは、2000年にイギリスで4人の有志により設立された、気候変動などの環境分野に取り組む国際NGOです。

設立者の一人、テッサ・テナント氏(女性 1959-2018年) は、ESG投資、サステナブルファイナンスなどの土台を創り上げた第一人者です。25年以上も金融界で、環境金融、SRI、責任投資、ESG、サステナブルな分野の開拓に力を注ぎ、OBE(大英帝国四等勲爵士、将校)を授与されています。

他、ジェレミー・スミス氏(現CDP評議会委員)、ポール・デッキソン氏(現CDP議長)、ポール・シンプソン氏(現CDP・CEO)により、設立されました。

CDPの大きな特徴は、企業の株主である機関投資家を、気候変動対策の主役にしたことでした。機関投資家向けに、世界の主要企業に対し、環境課題に対する取り組みについての質問状を送り、その回答を評価し、開示をしたのです。

毎年開示される「CDPレポート」は、ESG投資の判断材料として機関投資家に用いられ、世界で最も参照されているデータの1つです。

ESGって?

ESGは、
【 E 】 : Environment – 環境
【 S 】 : Social – 社会
【 G 】 : Governance – 企業統治
を指します。
これらの要素を投資の分析や意思決定、株主行動に取り込むことが求められています。

世界を変えたシンプルな手法

CDPは、シンプルかつ革新的な手法で世界のお金の流れを変えました。

それは、企業に質問状を送るという手法です。そしてその回答を、回答の有無も含め、分析・評価し、結果を開示しました。

CDPは、2002年に第1回の質問書を、Financial Times Global 500に入っている世界の主要企業500社に送付しました。

始めのうちは、質問書に回答しない企業や、環境問題に対して消極的な企業も多かったのですが、CDPに署名する機関投資家が増え、CDPの影響力が大きくなっていくにつれて、回答する企業も増えていき、企業の環境意識の高まりにつながっていきました。

CDP 回答企業

参照:CDP – Companies scores

上のグラフの、赤の棒グラフが回答企業の合計を表しています。回答企業数は、2003年から毎年増加しており、2020年には9617社もの企業がCDPの質問書に回答しています。

また、CDPに署名する投資機関は、2002年は35社(運用資産総額4兆米ドル)でしたが、今では515の機関投資家が署名しており、その運用資産総額は106兆米ドルに上ります。

このように、CDPに署名する投資機関が増えた背景には、機関投資家の間で、気候変動が企業にとって大きなリスクと機会になりうる、という認識が広がったことがあります。

SBT CDP 機関投資家

出典:環境省 SBTについて

どんな評価項目があるの?

CDPの企業向けの質問書には、

・気候変動
・フォレスト
・水セキュリティ



の3種類の質問書があります。

質問書に回答した企業には、それぞれの分野について、A、A-、B、B-、C、C-、D、D-の8段階の評価がされ、毎年開示される「CDPレポート」で、その評価が公開されます。

それぞれの質問書について、どのような評価項目があるのか、見ていきましょう。

気候変動
CDP 気候変動 質問書内容

参照:CDP 気候変動 レポート 2020:日本版

気候変動の評価項目には、以下のものがあります。

【スコープ1排出量】 事業者自らによる温室効果ガスの直接排出
(ガソリン、都市ガスの使用など) 
【スコープ2排出量】 他社から供給された電気、熱、蒸気の使用に伴う間接排出
(電気の使用など) 
【スコープ3排出量回答数】 スコープ3
(エネルギー起源以外の間接排出量)の15のカテゴリのうち、適切に算定され、報告されたカテゴリの数
【SBT認定】 SBTに認定されているか、あるいは他の目標がSBTに該当しているか
【その他気候関連目標】 低炭素エネルギーの消費や、メタン排出量削減など、その他の気候関連目標が設定されているか
【カーボンプライシング施策】 カーボンプライシング施策の対象となっているか、対象となる予定はあるか
【インターナルカーボンプライシング】 インターナルカーボンプライシングを導入しているか、導入予定はあるか
【シナリオ分析の導入】 シナリオ分析を導入しているか、またシナリオ分析をビジネス戦略に定量的・定性的に用いられているか
フォレスト
森林

CDPが森林破壊に注目する理由としては、生態系破壊や気候変動などの問題はもちろん、森林破壊が大きなビジネスリスクにもなるからです。

CDPによると、森林破壊に関連するリスク評価を行なっている企業のうち、92%は、森林破壊関連のリスクを重大なリスクであると位置付けています。
また、それらの企業の森林破壊による損失額の合計は、300億米ドル(約3兆円)にもなります。

逆に、森林保全に関連したビジネスの機会は、260億米ドル(約2.6兆円)分もあると算出されています。

よって、企業の森林保全に向けた取り組みは、その企業の業績を大きく作用する要素であり、機関投資家は、その取り組みの度合いも参考にして、ESG投資を行います。

CDP フォレスト 質問書内容

参照:CDP フォレスト レポート 2020:日本版

◆フォレストレポートの最終的な評価は、

・木材
・パーム油
・畜牛品
・大豆



の4項目についてなされます。

これら4項目は森林破壊の主要な要因とされているため、これらの産業に関連した食品・農業関連セクター、小売セクター、製造セクター、素材セクターなどの企業に、CDPは質問書を送付し、調査しています。

水セキュリティ
水セキュリティ

森林破壊と同様に、水問題も企業のビジネスリスクとなり得ます。

世界経済フォーラムの2019年のグローバルリスク報告書では、今後10年に世界の発展に影響を及ぼすリスク課題の中で、水危機が4位となっています
また、2018年に、企業は水問題によって385億米ドル(約3.8兆円)もの損失を被ったというデータもあります。

これらの理由から、CDPは、水セキュリティを気候変動や森林破壊に並ぶ大きな問題としています。

CDP 水セキュリティ 質問書内容

参照:CDP 水セキュリティ レポート 2020:日本版

◆水セキュリティの主な評価項目には、

・水ストレスの高い取水源の割合
・水リスクにさらされている施設の施設数、割合、第三者検証の有無
・気候変動に関するシナリオ分析による水の課題の特定をしたか



などがあります。

水ストレスの高い取水源の割合や、水リスクに直面する施設数や割合など、定量的な回答が求められる内容が多いことが特徴的です。
また、気候変動の質問書の評価項目にもあったシナリオ分析について、水セキュリティでも問われており、CDPがシナリオ分析を重要視していることが伺えます。

CDPとの連携組織

CDPは、その規模の拡大に伴って、様々な組織と連携し、環境活動を推し進めています。
その組織の例として、RE100やSBTがあります。

RE100
RE100

RE100は、The Climate GroupとCDPによって運営される国際ビジネスイニシアティブです。
企業活動で使用するエネルギーを2050年までに100%再生可能エネルギーにする計画が認められた、世界中の多くの企業が加盟しています。

加盟条件として、エネルギー使用量100 GWh以上であることや、最低条件として2050年までに100%、2040年までに90%、2030年までに60%、2020年までに30%再生可能エネルギーにする必要があります。

RE100に加盟することで、気候変動に対し、率先して取り組む姿勢を示すことができ、企業価値を高めることにつながります。また、投資家の投資判断にも直結します。世界的な再生可能エネルギーの普及と温室効果ガス排出削減にもつながります。

RE100は2014年の発足から加盟企業が増え続けており、2021年1月20日現在で、世界で284企業が加盟しています。

参照:RE100

SBT
SBT

SBT(Science Based Targets)とは、パリ協定が求める温室効果ガス排出削減水準に基づいて、企業が科学的根拠のある削減目標を設定するものです。

パリ協定が求める水準とは、世界の平均気温上昇を産業革命前よりも2°Cを十分に下回る水準(Well Below 2°C:WB2°C)に抑え、また、1.5°Cに抑える努力をする、というものです。最近では1.5°Cに抑えることが前提となりつつあります。

SBTは、CDP、UNGC(国連グローバルコンパクト)、WRI(世界資源研究所)、WWF(世界自然保護基金)の4つの機関が共同で運営しています。
また、We Mean Businessの取り組みの1つとして実施されています。

◆UNGC(国連グローバルコンパクト):
参加企業・団体に人権の保護、不当な労働の排除、環境への対応、そして腐敗の防止の実現に向けた努力を求めることによって、持続可能な社会の実現を目指している取り組みです。
国連グローバルコンパクト サイト

◆WRI(世界資源研究所):
気候、エネルギー、食料、森林、水などの自然資源の持続可能性について調査を行う国際的なシンクタンク。
WRI サイト(英語)

◆WWF(世界自然保護基金):
生物多様性の保全、再生可能な資源利用、環境汚染と浪費的な消費の削減を使命とし、世界約100カ国以上で活躍する環境保全団体。
WWF サイト

◆We Mean Business:
温暖化対策を推進している国際機関やシンクタンク、NGOなどが共同で運営しているプラットフォーム。ネットゼロ、エネルギー、都市、土地、産業、実現に向けて、回復力の7つの領域の取り組みを広める活動を行っている。
We Mean Business サイト

SBT 削減目標

SBT認定取得には、WB2°C目標の場合は2.5~4.2%/年、1.5°C目標の場合は4.2%/年以上の割合で温室効果ガス排出量を削減する必要があります。
参加企業は、この数値を目安として、5~15年先の削減目標を設定することが求められます。
(目標例:2030年までに2020年比でSCOPE1,2 を50%削減)

参照:
SBTについて – 環境省

最後に

CDPは、4人の有志が世界的大企業に対して質問状を送り、投資家向けに結果を評価し公表する、という手法で、世界のESG投資の具体的評価指標を示し、大きな影響力を与えました。

評価項目は世界の状況に合わせて見直されているため、今後もCDPの動きに注目して、それぞれの組織の脱炭素経営戦略に取り入れていく必要がありそうです。